ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんや上皮内がんに対して行われる治療法です。
毎週1回注入し、6~8回繰り返します。注入終了後も1~3年間は注入を維持した方がよいとの推奨もありますが、具体的なスケジュールは定まっておらず、実際に完遂率が低い、副作用も高頻度にみられるなどの問題点もあります。
働き
この薬は、結核菌の毒力を弱めた製剤で、結核の予防ワクチン“BCG”と同じものです。この溶液を膀胱内に注入すると、BCGは腫瘍部位に付着し、その細胞内部に取り込まれます。すると、BCGと腫瘍細胞に対する免疫を生じ、強い炎症反応が起こります。このようなBCG反応において、免疫系細胞のマクロファージが活発に働き、腫瘍細胞を貪食・破壊していきます。膀胱がんのうち膀胱上皮内がんと表在性膀胱がんによく効きます。完治の割合は、上皮内がんで約60%です。
具体的な使い方は、週に1回、この薬をカテーテルで膀胱内に注入、2時間ほど保持し腫瘍細胞と十分接触させます。これを計8回、8週にわたり繰り返します。
投与方法
尿道カテーテルを膀胱内に無菌条件下で挿入し、残尿を排出した後、通常80mgのBCGを含有している希釈液を同カテーテルより膀胱内にできるだけゆっくりと注入し、原則として2時間膀胱内に保持するようにつとめる。これを通常週1回8週間繰り返す。なお、用量及び回数は症状に応じ適宜増減し、また、投与間隔も必要に応じ延長できることとする。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
使用にあたり
- 専門医による治療がおこなわれます。まず、尿を排出し、そのあと膀胱内に薬液をゆっくり注入していきます。注入後、1~2時間は尿意をがまんしなければなりません。治療中に何かつらい症状があらわれたら、どんなことでもスタッフに話してください。
- 注入後の最初の排尿は、腰掛けて、指定された容器内にしてください。
- 治療後、排尿痛、灼熱感、頻尿、関節痛、また、発熱やかぜ症状を含め、いつもと違う症状があらわれたら、すぐに医師と連絡をとってください。排尿痛がひどいときは、鎮痛薬でやわらげることもできます。
BCG注入療法の副作用
BCG注入療法は抗がん剤注入療法と異なり、ごく軽微なものまで含むとほぼ全例の患者さんに何らかの副作用が起こります。
排尿痛、頻尿が最も多く80%、次いで肉眼的血尿72%、排尿困難33%などがあり、尿道痛や残尿感、陰茎浮腫なども来すことがあります。多くは1、2日で軽快しますので、軽い副作用の場合、治療を優先しなければなりません。また、発熱が60%、発熱に伴う関節痛、白血球の増多など検査値の異常が認められることがあります。下腹部痛や圧迫感などが起こることもあります。
重大な副作用としては39℃以上の発熱、2日以上続く38℃以上の発熱、全身消耗衰弱、鼠径部リンパ節腫脹、肺炎、咳(咳嗽:がいそう)、胸部や腹部痛、目のかすみなどがありBCGの全身感染が疑われます。このような場合には速やかにクリニックに連絡してください。
BCG注入療法で起こる副作用の多くは数日で軽快することが一般的ですが、まれな後遺症として、膀胱が萎縮してしまうことがあります。
BCG膀胱内注入療法を受ける前に
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。服用中の薬を医師に教えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は医師に伝えてください。妊娠中は使用できません。
- 事前に医師から、起こるかもしれない副作用や注意事項について十分説明を受けてください。
注意する人
体の免疫力が弱っている人は使用できないことがあります。たとえば、エイズや白血病にかかっている人、あるいは抗がん薬や免疫抑制薬、大量のステロイド薬を服用中の人などです。これらの人では免疫力が上がりにくく、全身性の結核に感染してしまうおそれがあります。
適さないケース
免疫抑制状態(エイズ、白血病、リンパ腫、抗がん薬・免疫抑制薬・ステロイド薬などによる治療中)、活動性の結核症、熱性疾患、尿路感染症、肉眼的血尿、妊娠中の人など。
注意が必要なケース
結核既往歴、ツベルクリン反応強陽性の人など。
飲み合わせ・食べ合わせ
免疫抑制薬や大量のステロイド薬、多くの抗がん薬など、免疫力を弱める薬との併用は控えます。また、結核菌に抗菌活性をもつ抗菌薬(抗生物質)は、この薬の作用に影響をおよぼす可能性があります。
飲み合わせの悪い薬
免疫抑制薬、大量のステロイド薬、免疫抑制作用を伴う抗がん薬。
飲み合わせに注意
抗菌薬(抗生物質)。
検査
副作用や効果をチェックするため、毎回BCG膀胱内注入療法前に検尿検査や診察を受けなければなりません。一通りの治療が終了したら、尿細胞診や膀胱鏡検査による効果の判定をおこないます。場合によっては効果判定目的で内視鏡手術(TUR-Bt)を行うこともあります。